個体数維持の鍵探る

保護条例制定を目標にヤシガニ調査を続ける八重山高校生物部。今年の最大サイズのヤシガニとともに =石垣市の八重山高校
調査地は、石垣島内の市街地と自然度の高い平久保地区だ。毎月、深夜までかかって草むらをかき分けて捕獲し、体重などを計測。体の模様などで個体識別することで、平久保では数キロも移動しているらしいことや、緑の少ない市街地でも意外にたくさんの個体が生き残っていることが分かってきた。繁殖行動が行われ、幼生が海から陸に上がる海辺の環境が個体数維持の鍵になりそうだ。
生物室では採取した卵を海水でふ化させて幼生を飼育中だ。昨年は、エビのような幼生が成長して、ヤドカリのように小さな貝殻に入るところが観察できたという。部長の池田晃雄君は「話には聞いていたが実際に見るとびっくりする」と目を輝かせ、後輩の指導にも熱が入る。1年生の山口夏海さんは「見慣れた生き物なのに、新しい発見があるのが面白い」と楽しみながら、基礎的なデータを着実に積み上げている。
- 卵から孵化した幼生を飼育し、体長約3.2ミリまで成長したメガロパ(幼生)
- 野外のヤシガニを捕獲し、体長や体重などを計測する八重山高校生物部の部員=8月、石垣市市街地
- 幼生を海に放った後、陸へ戻る途中に岸壁を上っているヤシガニのメス=9月、石垣市市街地海岸
識者コメント
昔から食用として名高いヤシガニですが、その生息状況や繁殖生態、幼生の生存率などの基本的なデータが不明なままに、乱獲による絶滅が危惧されているようです。生物資源としてのヤシガニの保全活用に直接役立つ研究で、その成果が期待されます。(安座間)
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